世界で最も邪悪な男
↑このタグでなら山ほど記事書けるんじゃないかって気がする。
黒歴史界のハードパンチャーだよこんにちは。
「世界で最も邪悪な男 (the wickedest man in the world)」といえば、誰だろうか。
この質問に対しては様々な答えが浮かぶことと思う。しかし、一般的かどうかはさておいて、世界で最も邪悪な男といえば自分の中ではこの人である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%A6%E3%83%AA%E3%83%BCja.wikipedia.org
オカルティスト、儀式魔術師、著述家、登山家(!)である。
自分は中学生の頃、この人が好きで好きでたまらなかった。
世界で最も邪悪な男との出会い
中1くらいの頃、図書館で魔術-理論と実践(アレイスター・クロウリー、国書刊行会)を見つけたのが出会いだった。正直言って、田舎娘には刺激がだいぶ強すぎた。一見して(そして何度見ても)今一つわけのわからない図や記号、意味ありげな語句の数々、種々の儀式、その手順など……自分は一発で魅せられてしまった。そして読めば読むほど、より強く、より深く惹かれていった。
クロウリーを崇拝するにあたっては、出会った本を世に出した出版社の名前も(ある意味)災いした。「国書刊行会……国?国が、こんな本を出しているなんて!すごい!」……とんだアホだった。知識がないとこういうことも起きる。
世界で最も邪悪な男を知りたくて
とんでもない本を見つけてしまった――その興奮で当時は胸がいっぱいだった。
しかし内容が読めなければそれも半減である。どうにかしてこの本を、作者を理解せねばならない。その一心で私は奔走した。まず本人の作品が他にないか、図書館の検索システムで調べる(当時、地元の図書館の検索システムでは所蔵でない本も検索結果に表示されたので役に立った)。所蔵館を確認し、土日になると小遣いの許す限りは出かけて行って読んだ。
そうした本を読むと、訳者のコメントや解説が付されていることがある。今度はそれを手がかりに、コリン・ウィルソンや澁澤龍彦、生田耕作、種村季弘……と、少しでもクロウリーに触れていそうなものを手に取った。
また当時実家にはインターネット環境がなかったため、市の貸し出しているiMac(G3だったと思う)で、すぐ固まるブラウザに四苦八苦しながらクロウリーのことを調べ続けた。ヘブライ語も根性で独習した。今の自分と比較すると大した行動力だ。
……だって私、あなたのことを知りたかったんだもの。
世界で最も邪悪な男に近づきたくて
学校の勉強そっちのけの努力の結果、何となく内容は読めるようになった。とはいえ理解には程遠い。ところで出会いのきっかけになった書名を覚えていますか?そう、「理論と実践」って書いてますね。当時の私はこの素晴らしい本をただ読んでいるだけではダメなんじゃないかと思ったのだ。
ということで、それから私の奇行の数々が始まる。
なんで止めてくれなかったのお母さん!
奇行の内容は
・部活の仲間に「魔術」の内容を説いて回る
・ついでに部員に五芒星描く練習をさせる
・いいから覚えろ!と各種詠唱も練習させる
・何なら儀式の真似事もさせた
・(これを杖にしよう!)と思って実家の庭木をへし折り、しばかれる
・某漫画のクロウリーに心の底から憤る
・俺のクロウリーはそんなんじゃねえんだよ!というクロウリー語り
・儀式用の黒いめんどりを探してホームセンターをほっつき歩く
・自らタロットを創作しようと試みる
など。
……なんで止めてくれなかったのお母さん!!!!!!!!
両親は娘が何をしているかにあまり興味がなく、奇行全盛期の間、一度も突っ込まれることはなかった。それを幸いと捉えるかどうかは微妙なところだ。
またいつか、世界で最も邪悪な男
さてあんなに(一方的に)燃え上がったクロウリーへの愛は、中3の頃にはすっと冷めてしまった。当時インターネットを通じてある女の子と遠距離恋愛を始めたこともあり、また受験生になったこともあり、クロウリーのことはそれほど……な感じになり、そのまま鎮火して再び燃え上がることはなかった。
それから長いことクロウリーなんて忘れて暮らしていたのだが、思わぬ流れ弾を浴びたことがある。
大学のとき、精神面の不調から半年間休学した。休学期間は地元に帰り、病院以外では外出できなかったのだが、その病院で医者に向かって母上が突然
「あの、この子昔魔術の本とか読んでて……」
と言いかけたのである。思わず「オゥッフ」って変な声が出たしマジで心臓止まるかと思った。たぶん医者も唐突過ぎて聞き取れてなかったんじゃないだろうか。とにかく、「いいから!いいからァ!!!!!」と絶叫しつつ母の口を押さえて黙らせるので精一杯であった。医者が追撃しなかったことに救われたが、昔の自分よ、恋するのは自由だが相手は選んだ方がいいぞ。思わぬところで火傷する羽目になるからな。
まあそんなこともあったけど、結果的にはクロウリーのことを好きで良かったんじゃないかな、と思う。調べ方そのものもそうだし、調べる過程で知ったことは多い。国書刊行会は今でも大好きな出版社だし、コリン・ウィルソンや澁澤龍彦、種村季弘、生田耕作などはクロウリーがいなければ出会うのがもっと遅くなっていただろうから。
ありがとうアレイスター・クロウリー。
2023年追記:
最近国書刊行会から「法の書」が出てうきうきしながらペーパーナイフを買ったのは私です。一度やったら戻せない、一度きりの秘蹟……それってめっちゃ魔術じゃーん!とアホほどテンション上がるよね、あれ。不器用だからめちゃくちゃ緊張するけど。