ナヴィガトリアの新刊が先日届きました。いえい!
以前書いた作品紹介はこちらから
おすすめ漫画「ナヴィガトリア」(押石和佳、集英社/ジャンプ+) - 四の五の帳
待ちに待ったナヴィガトリアの第2巻。1巻が第一課題の途中で終わっていたので、予想では第一課題後半~四人の王様編までが収録されていると思ったんだけど、なんと現行の連載に追いつくところまで収録されていたのでびっくり。今2巻を買えば即追いつけますよ!買って!!!
1巻と比べると特大ボリュームなんだけど、この巻には番外編が収録されてないのがちょっとだけ寂しいかも。でも2024年9月10日現在ジャンプ+ではポイント消費なしで番外編を読めるので、まずは1巻と2巻を揃えてからジャンプ+で番外編を補完すればあっという間にキャッチアップできるって寸法よ。頼むからみんな読んで。
ところで。帯がすごくいいんですよ。
そう、まさに友情!努力!絶望!この物語を言い表すのにぴったり。
この巻は特に絶望多めでお送りしてます。
ネットとかで買うと帯の画像がないことあって残念。もっと見てほしい。
いや~、単行本の何がいいってまとめ読みできるとこだよね。
連載時に1話ずつ読んでいたときには気付かなかったこともまとめて振り返ることで初めて気付けたりするし、こんな気持ちで読んでたなぁとか思い出したりもする。読み返すとやっぱ違う味わいがあって面白い。
以下ざっくり感想を。
まずは第一課題の指導者ゲーム後編。
あんなに大物感バリバリで登場したリコタンがいきなり失敗し、色んなものを失ってしまう展開にはびっくり。正直ずっとああいう態度のままでライバルやるのかなぁと思ってた。
侵略国家の代表らしくとにかく押せ押せの精神で攻めてくるリコタンにも事情はあって、というか事情しかなくて、自分で背負ってるものより周りに背負わされてるもののほうが多い子供もたくさんいるんだろうなと寂しくなった。
地味にマドレーヌちゃんの初セリフもあるんですよ(読み返して初めて意識した)。このときは料理しますって申し出るだけの子でしかないのでまさかあんな風に化けるとは思ってなかったというか、正直めちゃくちゃ印象薄かった。
これからも「チョイ役かと思ってたけど実はヤバいやつ」がどんどん出てくるかもしれないので注意せねば!
個人的にやっぱり最重要人物はリコタン、アイダン、ナヴィの3人だと思う。この3人は背負ってる子でもあり背負わされてる子でもあり、ほとんどずっとこの物語の巻き起こす渦の中心にいる気がするんだよね。そんでみんな魅力的なんだよ……。幸せになって……。
続いては第二課題、四人の王様編。
四人将棋に似てるけど駒が多くてめっちゃ頭使うやつ。ペアになって戦い好成績を収めるのが目的のシンプルな課題かと思いきや、肝心のペアは「クラス内の成績が真逆の生徒」と組まなければならない。
クラス内1位のマナブの相手はクラス最下位のマドレーヌ。マドレーヌは言ってしまえばやる気がない生徒で、幼なじみと一緒にいたいがために入学しただけでナヴィガトリアにも興味はない。
これ、高校生のときに全く同じ条件で体育のバドミントンのペアを決められて、自分はぶっちぎり最下位だったから何でもできる運動神経の鬼と組むことになったのを思い出してしんどくなった。Kさん、その節は本当に足を引っ張ってばかりでマジすみませんでした。なので「私でごめんなさい…」って言ってるときのマドレーヌちゃんの気持ちが痛いほどよくわかる。自分まで悲しくなったもん。
マナブはどうにかこうにかマドレーヌを口説き落としてモチベを上げることに成功。そこからちゃんと勝利できたこと自体ももちろん素晴らしいんだけど、やはり注目してほしいのはマドレーヌちゃんの恋心!そしてマナブの鈍感さ!!!
ここからはラブコメ要素がスパイスになってより一層面白くなるので四人の王様編が大好き。マナブは絶対にヒナちゃんとくっついてほしいけど、マドレーヌちゃんにも絶対諦めないでほしい。どっちのヒロインも素敵。
ここでマドレーヌはいわゆる「ヤンデレ」ではないことを強調しておく。おそらくマナブと同じくらい恋愛に対する経験がなくて不器用なのもあるし、あくまでもマナブを死なせないために戦っているから。同時に「マナブを殺すのが自分以外の人間になるのは嫌」と考えてもいるけど、マナブがナヴィガトリアになることを祈っている気持ちに嘘はない。自分だけのものにするために殺したいのではないしね。不器用だから極端に走ってしまうだけだと思う。
番外編(2巻未収録)では自分の属する西圏の国々のお茶会にマナブを招待し、ナヴィガトリアを目指していると表に出している生徒ばかりではないとそれとなく気付かせようとする。選挙は1年後なので、能ある鷹が直前まで爪を隠す可能性を教えておきたいのだ……が、マドレーヌの援護射撃に多分マナブは気付いてない気がする。なんでって直前で殺害予告(マナブ視点)されてるから。順序間違ってる不器用さも好き。どっかでバランス取れる日が来るのかなぁ。
思いもよらぬ試練や再会もあったりして、四人の王様編はすごくお気に入り。
四人の王様編が終わり、続いては洞窟探査編。
これが現行の連載に直接続いているパート。デメテールの洞窟を調査して帰るだけの簡単な課題かと思ってたらとんでもないことに……。
とんでもないこと
ヒロインの頭がカチ割られるとは思ってもみなかったよ……。
この回のあと更新されるまでずっとそわそわして落ち着かなくて、次の回でもっと落ち着かなくなって悲しい気持ちになって、それから今に至るまでとことん重い話が続いている。
ナヴィが落下したのは普通に考えてやっぱ突き飛ばされたんだろうな……と思ってたんだけど、更新された話読んだらただ突き飛ばすだけじゃなくてナヴィがロープを掴もうとした手を切りつけててうわっ……ってなった。そこまでするか????????あまりにもえげつない手口で驚き。
このときナヴィに危害を加えたのはAクラスのアナスタシアの一味。四人の王様編で、アナスタシアの国に逆らえない関係の生徒がナヴィのペアの相手だったことを利用してわざとナヴィの足を引っ張らせるように仕向けた生徒だ。
ナヴィガトリアを選ぶ選挙に立候補できるのは成績上位10位までだが、直前の成績発表の際にアナスタシアとその仲間たちはそこに入っていなかった。クラスリーダーのポイントが加算される関係もあるだろうが上位陣はかなり固定されている。そのため、どうせナヴィガトリアになる道がないなら……と、デメテール人が人権を得るのを邪魔する行動に出たのかもしれない。
だからってさぁ……。さすがに課題が終わったら退学にしてくれるよね?ね?
その後色々あって結局洞窟探査どころじゃなくなってしまい、みんなサバイバルを始めざるを得なくなってしまったんだけど、そんな極限の状況でも仇討ちのことが頭から離れないアイダンが悲しい。
回が進むごとに生徒たちの事情や国家間の関係などがより掘り下げられていき、どんどん引き込まれる。重要な情報も色々と追加されるし。
まず「実はどの地域の国かによってクラスが分けられていた」ことが重要かなと。大まかにだけど地域別に代表者が選ばれるように設計しているんだと思う。生徒同士のコミュニケーションの齟齬も少なくて済むんじゃないかな?いや、近いゆえに衝突する例もあるか……。
あと、クラスの雰囲気がよりわかるようになった。といってもAクラスとDクラスが対照的に描かれているのが主でBとCについてはまだ未知数のところがあるけれど。マナブがクラスリーダーになり、リコタンに勝利したことでDクラスの雰囲気を決定的に変えたのに対し、クラスリーダーのナヴィが軽んじられることでAクラス内に分断が生じていることの対比がある。そこにはマナブとナヴィの出自の違いもあって、デメテール人かどうかだけで左右される部分の大きさを考えてしまう。
四人の王様編で、リコタンの国であるドンモスとアイダンの国であるエナンの因縁が一部明かされたのも大きい。そりゃね、恨むよね。はっきりとこの国がモデルだというのはない(登場する国家は全て、色んな国や歴史や特性のハイブリッドである)と思うので、地球を舞台とした架空の国家の架空の歴史だと捉えるにしてもなかなか根深く重いものがある。
この話の続きは読めば読むほど重たいので、現行の連載も含めて読んでほしい。本当に悲しいから。指導者ゲームで撃たれたアイダンがマナブの手当てを断るシーンの重みがやっとわかったよ。アイダンが背負うものの重さも。
それから、2巻に含まれている内容で大事なのは生徒の心のありようが変わること。マナブに恋をしたマドレーヌの大変身もそうだし、一度大事なものを失ったこととマナブに感化されることで少しだけ身軽になったリコタンもそう。ただ待つだけのヒロインではないヒナちゃんの行動も素晴らしいし、物語をどんどん前進させていく。
一方で、変わらないことによって生じるものも無視できない。ずっと変わらずに存在し続けるアイダンの怒り、自分たちを知ってもらうために頑張るナヴィの頑固なまでの健気さ、ナヴィを一貫して「デメテール人」と呼び敵視し続けるアナスタシアたちが招く事態も同じように物語を前進させていく。
今、つらつらとこれを書きながらも次の更新が待ちきれない。
ということで大ボリューム大満足の第2巻でした。第3巻も楽しみにしてます!
しかし、今回めちゃくちゃ本編を詰め込んでるから次の巻は遅くなっちゃうかも……。今回未収録の番外編もいつか収録してくださるとハッピーです。これからも変わらず応援してますよ~!
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