四の五の帳

あったこととかやったこととか

ベイビーわるきゅーれ(2021)

アマプラのウォッチリストを消化中~。

殺し屋という裏の顔を持つ女子高生、まひろとちさと。高校卒業後、組織の意向でふつうの社会人として暮らすことに(高校生に代わる表の顔を手に入れるため)。それぞれバイトを探したり、殺しの仕事を請け負ったり、なかなか一筋縄ではいかない日々を送っているうちにひょんなところから、ていうか主にまひろのせいでヤクザ(パパ・息子・娘)と戦う羽目に……。

 

とにかくセリフ回しがよい!!!!!

やっぱこう、芝居がかってるなあとかクサいなあとか思うとこの手のやつって急激に観る気なくしちゃうんだけど、もう全然そんなことない。少なくとも主人公2人は「セリフ喋ってる」んじゃなくて「ふつうに話してる」って感じですごくよかった。演技っぽくない、平熱の話しかたで聞いてて不思議と居心地がいい。まるで2人と同じ空間にいるみたい。言うことがあまりにも素っぽくて笑っちゃう場面も。

2人が友達でも仕事仲間でもルームメイトでもない、不思議な距離感を持ってるのが面白い。べたべたでもないけど事務的でもない。

 

一方、途中で遭遇するヤクザ一味のセリフはどうしても芝居がかって聞こえてしまい、話を転がすのに必要な存在のはずなのにこの映画ヤクザ出てくるとあんま面白くなくなるなぁと思った。ごめんよ。

でもヤクザパパの冗談がマジで通じないっていうキャラ設定は強烈でよかった。マジで冗談が通じないからやることがすげえ極端。なんでそんなことするのよ~!って、ヤクザ息子の日ごろの気苦労を想像しちゃった。どっちも後々ちさとに殺されるんですけどね。あとヤクザ娘もちさとが殺してたわ。あれ?ちさとばっかりヤクザ殺してるな?

 

極端といえばまひろもちさとも結構極端で、バイト先で突然キレて人をしばいたりしてしまう。映画冒頭のまひろの面接シーンでの殺戮劇はめちゃくちゃハード。一応、全員殺したところで場面が戻り、今のはまひろの空想でしかないことがわかるという仕掛けになっているのだが、コンビニを根城にしたヤクザ(?)を殺す依頼か~と普通に勘違いした。

ただ、そのあとちさとが暴力振るうシーンはまた空想か~と思いきやこっちはガチで……もしかしてちさとのほうがヤバい?あっでもまひろも前述の面接ついでに店長の関節極めてたな。体感、ちさとのほうが見ててヒヤヒヤする場面が多かったかな。まひろ、そもそも人と関わんないし……。

 

一見コミュニケーション能力の高いちさとのほうが世の中うまいことやっていけるかといえばそうでもなく、ちゃんと自炊してる分まひろのほうが生活力は高いよなあ、とか、ちさといつも遅刻しそうで慌ててるし案外ルーズなのかなあ、とか、なんか危なっかしい(けど今のところは回っている)暮らしをのぞき見させてもらうのが楽しい。

まひろは終始ボソボソとしゃべる傾向があるけどちさとは割とハキハキしゃべるほうで、あと何となく激しやすいんかなって感じ。まひろに比べればコミュ力は高いんだけど、内面はこっちのほうがより血の気多くて危なそう。で、お互いがいい感じに補い合ってるとかそんな感じは別にしないのがいいところ。違うベクトルの問題と無問題を持ち寄って同居しているというか。

ギリギリ、どっかにいるんじゃないかなって思えてくるし、そのリアル感を支えるのはやっぱり2人のセリフ回しだと思う。

 

あと、何といっても殺陣!!!殺陣すごい!!!!

冒頭の面接からの殺戮シーン、「コンビニのバックヤードから店に出てきたまひろが従業員と戦う」ってシチュエーションなんだけど、一対多の戦いの迫力がすごい。ひとりずつ襲いかかるなんてことはしないで最初から全員で仕留めにくる。お互い掴んだり掴まれたりもみくちゃにされながら戦うんだけど、みんな殺意むき出し。あまりにガチっぽいので、逆に「誰もまひろの頭部をナイフで狙わない」ことが不自然に思えてくるほど。殺す気なら頭狙おうぜ!って観ててなっちゃったよ。

 

そんな最初の10数分で、なんて動ける人なんだ……!と感動。感動ついでに調べてみると、演じている方は伊澤彩織さんといい、スタントダブルなども務めるガチのガチ勢だった。どうりで。自分みたいな運動神経ナメクジ以下勢からは雲の上の……ワルキューレってそういう……?運動できない人間の運動できる人間(特にダンスできる人間)への憧れ、めっちゃ強い。

 

終盤、ヤクザ娘軍団との戦いの中で強者との戦いに飢えている男(Wikipedia見たら渡部って役名だった。重要そうな役どころだったのにフルネームじゃないのかよ……)とまひろが激しい格闘を繰り広げるシーンなんかもう最高。終盤一番の見せ場なんじゃないかな。

コンビニ戦とは段違いに殺意がむき出し。観ていて思わず「うわっ」「えっ」「いたっ」って声が出るほど。まひろのほうがずっと小柄なのに、ちゃんと「渡り合ってる」感が出てるのがすごくよかった。渡部役の男性は三元雅芸さんという殺陣師の方で、ひとつひとつのアクションがとにかくキレキレ。目を狙ったり、口に指を引っかけたりといった禁じ手も余裕で使ってくるのが戦いの本気度を上げてた。もうこの殺陣だけでも見てほしい。自分はこういうの大好き。

辛くも勝利するシーン、銃を取りに行くと見せかけての頭突きは痺れたなぁ。そこでフェイントやるんだ!って。んで、ちゃんと銃拾ってとどめ刺すわけ。渡部は劇中で強いやつとして描かれてて、観客である自分もそう認識してるからこそ、「どんなに鍛えててどんなに技の精度が高くても銃の前で人は脆い」っていうのがなんか切なかったなぁ。まあでも命かかってんのに律義にステゴロでとどめ刺すまで戦い続ける法はないから仕方がないね。死闘からの辛勝という構図を成立させられるだけ渡部の強さに説得力を与えられてることもすごいと思う。

 

このシーン、Wikipediaによると撮影1週間前の合わせのときにまひろ役の伊澤彩織さんがミット打ちでパンチを笑われたので本番は肘打ちを入れたり半分以上アドリブだったらしい。確かに、パンチしても威力出てるように見えないなら肘のほうがビジュアル的にも痛そうではある。でもすごいよね。打ち合せどうしてるんだろ。やっぱり始まりと終わりは何となく決まってて、あとは適宜アドリブを入れてくのかな。相手の動きに咄嗟に合わせたりしなきゃとか考えると、動ける人って本当にすごい。

 

ちさとは設定的に格闘が得意じゃないのか、単に銃が好きなのか、主として銃火器を使うスタイルなので殺陣らしき殺陣は少なめ。終盤いざカチコミ!って準備してるシーンで家の中にあまりにも雑にマシンガンを隠していたので笑ってしまった。そんなガムテープ止めとかする?ヤクザ娘その他との対決も基本は銃頼み。

んで、まひろが死闘の後に鼻とか口からだらだら血流しながら手を差し出してくるのを見たちひろが「血つくのやなんだけど」って言うのがめちゃくちゃいい。ヤクザ一家を相手にするのはさすがになかなかない状況だろうけど、血や死なら、あくまでも彼女たちには日常なんだなって。よく頑張ったねとか、あたしのためにありがとうとか、大怪我しちゃってどうしようとか、そういうアドレナリンかなんかに流されて感動したりしない子たちなんだなって自分は解釈した。そんでそれがとっても素敵なことみたいに見えた。

他にも、暴力に対するちさとの感覚のズレを象徴してるエピソードとして、バイト先の先輩をブチしばいてから家帰ってきて言うことが「まだ給料もらってない、まあいいか2万くらいだし(要約)」だったってのがある。暴力が日常的じゃない人間からすると、いや給料以外にもっと気にするとこあるだろ!バイト先の先輩の生死とか!って感じなんだけど、折に触れて描かれる非常識ぶり(特に暴力関係)が殺し屋稼業の一方でバイト探して社会人やるにはちょっと難しい、っていう設定の根幹を支えるのに一役買ってるよね。擬態しようと思っても慣れには敵わない。いや、そもそも真面目にやる気があるかも怪しいけど……。

 

続編もあるんだけど、なんかもうこれはこれで完結って気持ちなんで今のところ観る気はないかな。殺し屋の2人がそれなりに生活を営んでいって、トラブルに巻き込まれたりもしてるけど、また暮らしは続いていくよね、どっかで。それで終わり。でいいじゃん。

散々書いたとおり、アクションがはちゃめちゃにいいんだけど、個人的にはこの話の肝はしゃべくりの部分にあると思います!

 

あと本筋とめちゃくちゃ関係あるわけじゃないんだけど、メイドカフェで出てきた姫子先輩があまりにもかわいすぎて調べてしまったらやっぱ素でかわいすぎた。あんな目大きいこと、ある?

 

※重要※

「夢は逃げない。逃げるのはいつも自分だ。」は高橋歩さんって方の言葉らしいすよ。少なくとも野原ひろしの言葉じゃないんでまひろは正しい。

 

……という、今日観た映画の話でした。アマプラで配信されてるんで是非ぜひ。予告編観てから決めるのもありだと思う。

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